双日株式会社は、フィンランドのスタートアップ企業Hycamite TCD Technologies Oyへの追加出資を発表しました。これにより、双日はHycamiteの筆頭株主となります。
Hycamiteは、天然ガスやバイオガスの主成分であるメタンを熱分解し、二酸化炭素を排出せずに水素と固体炭素を製造する技術を有する企業です。この方法で製造される水素は「ターコイズ水素」と呼ばれ、次世代の水素製造技術として注目を集めています。
水素は、化石燃料由来の「グレー水素」、化石燃料から製造されるものの製造時に発生するCO2を地下に貯留することで大気中への排出を減らす「ブルー水素」、再生可能エネルギーを使って水の電気分解により製造される「グリーン水素」、天然ガスの主成分であるメタンを分解する「ターコイズ水素」に分けられます。
今回の資金調達により、Hycamiteはフィンランド西部のコッコラ工業団地内に建設した製造実証設備の運転・実証試験を進めます。同社は2025年初頭の稼働を目指し、欧州最大級となる年2,000トン(約2,880Nm3/h)のターコイズ水素を生産する計画です。
双日は、2023年の出資に続く今回の追加出資を通じてHycamiteとの協業をさらに強化し、同社の技術を活用した国内外でのプロジェクト組成を加速させる方針です。すでに電力・ガス会社、化学メーカーなどパートナー候補企業との協議を進めており、2020年代後半での商業化を目指しています。
Hycamite独自開発の触媒技術により、一般的な電気分解による水素製造プロセスで消費する電力の13%という少ないエネルギー消費量で水素製造が可能です。さらに、グラファイトやカーボンナノファイバーなど付加価値の高い固体炭素製品を併産できる点も特徴です。これらの製品は、リチウムイオン電池やセメント、タイヤなど幅広い用途での採用が見込まれています。
双日は中期経営計画においてGX分野を戦略的強化領域に設定しており、Hycamiteとの連携強化によりターコイズ水素の商業化を推進することで、日本国内のみならず世界中のさまざまな産業の脱炭素化に貢献していく考えです。本取り組みは、カーボンニュートラル社会の実現と双日の収益・企業価値拡大の両立を目指す同社の戦略に沿ったものであり、今後の展開が注目されます。