Research Nesterが世界の二酸化炭素回収および貯蔵(CCS)市場についての調査レポートを発表。CCS市場は、2023年から2035年までに最大15%のCAGR(年間成長率)で拡大すると予測され、2035年までに110億米ドル規模に到達する見込みです。
主な成長要因は、二酸化炭素排出量の増加です。2022年には、産業活動やエネルギーの燃焼によって大気中に放出される二酸化炭素(CO2)の量が約0.8%(約3億2000万トン)増加し、過去最高の約35万トンに達しました。一方で世界的には、パリ協定で定められた目標達成のために温室効果ガスの排出削減が求められており、炭素の回収と貯留に注目が集まっています。
世界中で毎年、石油1.3億トンに相当する5.8億テラジュールのエネルギーが消費され、大量のCO2を排出しています。つまり電力部門の脱炭素化は、ネットゼロ達成へ向けて不可欠な要素であり、CCS技術の需要の高まりにつながっているとレポートではまとめられています。
排出規制がCCS市場の成長を後押し
CCS市場を北米、欧州、アジア太平洋、中南米、中東・アフリカ地域の5つの主要地域に区分。北米地域は2035年末までに最大規模の収益を上げると予測されています。
北米地域では、政府が温室効果ガスの排出削減を目的とした厳しい規制を実施しており、規制に合致したCCS技術の導入が盛んになる見込みです。特にアメリカでは環境保護庁(EPA)がクリーン・パワー・プランの下で排出削減目標を設定し、発電におけるCCS採用を奨励しています。カナダでも、排出削減イニシアチブを後押しする炭素価格バックストップを導入している。CCSの研究、開発、導入プロジェクトには、官民の投資が流入しています。
年間成長率(CAGR)では、アジア太平洋地域の成長が顕著です。アジア太平洋地域の各国政府が、気候変動と闘うために野心的な排出削減目標を採択する中で、CCS技術は、こうした目標を達成する上で極めて重要な手段と考えられており、規制による支援やインセンティブにつながっています。例えば中国は、2030年までに炭素排出量をピークアウトさせ、2060年までにカーボン・ニュートラルを達成するという目標を掲げています。インドもまた、炭素強度を削減し、非化石燃料の生産能力を増やすことを約束している。アジアの多くの国々がエネルギーを石化石燃料に依存し続けている中、CCSはエネルギー安全保障を維持しながら排出量を削減する手段として用いられる傾向です。