【ポイント】
契約者とPPA事業者との間で結ばれる長期契約。
初期費用を抑えて太陽光発電設備を導入することができる。
オンサイトPPA、オフサイトPPA、バーチャルPPA、フィジカルPPAなど複数種類がある。
PPA(Power Purchase Agreement:電力販売契約)とは
PPA(Power Purchase Agreement:電力販売契約)は、契約者とPPA事業者との間で結ばれる長期契約です。需要家以外の第3者が発電設備を保有することからTPO(Third Party Ownership:第3者保有モデル)とも呼ばれています。
企業や自治体、個人が保有する施設の屋根などをPPA事業者が借り、無償で太陽光発電システムを設置します。所有形態は「PPA事業者が所有」という形になりますので、売電収入はありませんし、自家消費分の電気料金も有料が一般的ですが、それでも新しい太陽光発電の形態として広まりつつあります。
PPA(電力販売契約)の仕組みを簡単に
混乱しがちなPPAモデルですが、仕組みを簡単に解説します。のちに解説しますが、PPAには複数種類があるためここでの解説はあくまで一例です。
PPAの登場人物は3つ。まず太陽光パネルの設置や管理を行うPPA事業者。次に遊休地や屋上など太陽光パネル設置のためのスペースを貸し出す施設所有企業。そして最後にPPA契約により設置された太陽光パネルから生成された電力を使用する電力使用者です。
PPA契約のパターンによっては、電力使用者=施設保有企業となることもあります。

企業は自社ビルの屋上や遊休地などの空きスペースをPPA事業者に貸し出します。そのスペースにPPA事業者が太陽光発電システムを設置・その後の維持管理を行います。
電気使用者とPPA事業者の間には電気料金の支払いと、太陽光発電で生み出された電力の供給という関係性が生まれます。
PPA(電力販売契約)の種類
企業が契約するコーポレートPPAはオンサイトPPAとオフサイトPPAの2種類に分けられ、オフサイトPPAはさらにフィジカルとバーチャルの2種類に分けられます。

オンサイトPPAでは、企業などの電気使用者が電気を使用する拠点(オフィスビルなど)の敷地内(屋上など)に太陽光発電施設を建設します。
そのためオンサイトPPAでは、再エネを安く使用できる傾向にあります。一方で、都心部のオフィスビルなど敷地が限られているエリアでは導入が難しいという難点もあります。
これに対してオフサイトPPAは、電力を消費したいポイントと発電するポイントが離れているために、一般送電網を使用するための託送料が発生し、電力使用コストがオンサイトPPAと比較して高くなる傾向にあります。

PPA(電力販売契約)のメリット
PPA(電力販売契約)のメリット①:追加性
PPAに限ったことではありませんが、太陽光発電を新設することは「追加性」の観点から気候変動の抑制に効果的であると考えられます。
追加性(additionality)とは、「世界に再生可能エネルギーを増やしたか?」という考え方です。
自社ビルの照明既存の水力発電由来の電力を活用したと仮定します。その発電所が生み出せる電力が急に増えることはないわけですから、自社のCO2排出量は減るかもしれませんが、他の企業や家庭とパイを奪い合うことになり、日本全体や世界全体での気候変動の抑制に効果は限定的であると考えられます。
一方でPPAは、新たに太陽光発電設備を設置し、新たな再エネ発電のキャパシティを追加するわけですから、国全体でのCO2排出量の削減が期待できます。
PPAのメリット②(電力販売契約):費用を抑えて再エネを導入できる
PPA契約が企業に与えるメリットとしては、コスト面が大きいでしょう。
まずPPA契約では太陽光発電設備の導入コストはPPA事業者が負担します。それに加えて、設置後の設備点検や、発電量のチェック、修繕、交換など、設備ににかかわる諸般のコストは基本的にPPA事業者側の負担となるため、一般的な自社保有型の太陽光発電設備と比較して、手軽に導入できるといえます。
さらに、フィジカルPPAのコストは一般的な電気料金よりも安い傾向です。(※2022年4月の水準)
日本における事例と課題
再エネ活用を推進する国際イニシアチブ・RE100参加企業が使用する電力のうち、28%に相当する42TWh(=テラワット時)がPPAにより調達されたという報告もあります。
日本でもここ数年多くの企業がPPA契約を導入しています。ここでは事例のいくつかを紹介します。
Amazon:オフサイトPPA
GAFAの一角を担う米アマゾン・ドット・コムでは、2020年に世界最大の再エネ購入企業となりました。2040年ネットゼロ、2025年再エネ100%を目指し、現在も世界中で再エネの調達を進めています。
同社は2023年2月15日に、伊藤忠商事が出資する株式会社クリーンエナジーコネクト(以下CEC)とオフサイト型PPAを締結。CECは、2025年3月までに、国内合計700カ所、太陽光パネルの出力約70MW、連系出力38MWの固定価格買取制度に依存しない太陽光発電所を開発する予定です。
イオングループ:オンサイトPPA
日本全国に約17,000店舗を展開するイオングループでは、その規模を活かしてグループ各社で太陽光発電設備の設置を進めています。
2019年4月にイオンタウン湖南へのオンサイトPPAの導入を発表。同施設の屋上に1MWを超える発電能力のある太陽光パネルを設置し、そこで発電された電力をイオンタウン湖南が自家消費分として購入・活用するという契約を締結しています。
さらに2021年4月には、千葉県の顧客フルフィルメントセンターの屋根に最大3MWを超える発電能力を持つ太陽光パネルをPPAモデルにより設置。2022年には、イオンモールが、同社が管理・運営する160モールで使用する電力の再エネ転換を目指すと発表し、PPAを含めて切り替えを進めるとしています。
まとめ
PPA(電力販売契約)について、概要や事例を紹介しました。
ここでは紹介できませんでしたが、一般的に10年~20年の長期契約となる点や、PPA事業者側の負担が大きいため審査が厳しいなどといったデメリットも存在します。
しかし、導入企業から見ると初期費用やメンテナンスの手間をかけずに太陽光発電設備を導入でき、近年では普及が進んでいることも事実です。