アメリカ、カリフォルニアに拠点を置くベンチャー企業、Inlyte Energyは、800万ドルの資金調達を実施しました。調達された資金は鉄と塩から生まれたグリッドバッテリーの開発に活用される予定です。
このバッテリーソリューションは、以前に商業化されたナトリウム金属ハライドバッテリーのデザインをベースにしており、高効率、長寿命、競争力のあるエネルギー密度、優れた安全性を備えたエネルギー貯蔵システムを超低コストで作成します。
現在、太陽光や風力エネルギーは、化石燃料に比べて経済的なエネルギー供給源として急速に台頭しています。しかし、再生可能エネルギーの課題の1つは、そのエネルギーを貯蔵する手頃な方法の不足です。風力や太陽光などの断続的な再生可能エネルギー源から供給される電力を有効活用するには、エネルギー貯蔵技術への大規模な投資が不可欠です。電力グリッド貯蔵市場は、風力と太陽光の経済性に大きく依存し、2030年までに年平均成長率(CAGR)が35%に達するとの予測も存在します。
同社の発表によると、Inlyte Energyのソリューションは、リチウムイオン、ナトリウムイオンなど他のバッテリータイプに比べていくつかの利点を持っています。この新しいバッテリーの製造コストは非常に低く、鉄と食卓塩は多くの地域で容易に入手できる素材です。これにより、外国管理のサプライチェーンを避けた生産が可能になり、エネルギー貯蔵を費用対効果の高いものとします。さらに、このバッテリーは完全に固体セラミック膜と可燃性の有機物を使用しておらず、非常に長い寿命を持ち、リチウムイオンと類似したフットプリントを提供します。
Inlyteの資金調達ラウンドには、At One Venturesをリードに、First Spark Ventures、Valo Ventures、TechEnergy Ventures、Climate Capital、Anglo Americanなどが参加しました。 Inlyte EnergyはActivateとLawrence Berkeley National Labとの協力のもと設立され、2022年にはバッテリー開発に対してARPA-E賞を受賞し、その技術が高く評価されました。さらに、2023年のCleantech 50 to Watchにも選出されました。
Inlyte Energyの創設者兼CEO、Dr. Antonio Bacligは、「従来のナトリウム金属ハライドバッテリーは、1980年代と1990年代に電動車向けに開発されましたが、そのコストは競争力に欠けました。」「私たちはスタンフォードでその設計を電動車向けではなく、電力グリッド向けに最適化し、鉄を用いることで驚くほどコストを抑えられることに気付きました。手頃な価格のエネルギー貯蔵は、カリフォルニアだけでなく、世界中で化石燃料に立ち向かう真のソリューションです。」とコメントしています。