2023年上半期のグリーンボンド(環境債)発行額が過去最高に

ロンドンを中心に世界19か国で展開する法律事務所・Linklaters(リンクレーターズ)は、世界のグリーンボンド発行額が過去最高の3,510億ドル(約49兆円)に達したと調査結果を発表しました。

データ・リサーチ リサーチ
Climate Bonds Initiativeのデータより編集部作成

ロンドンを中心に世界19か国で展開する法律事務所・Linklaters(リンクレーターズ)は、世界のグリーンボンド発行額が過去最高の3,510億ドル(約49兆円)に達したと調査結果を発表しました。

Bloombergのデータを使用した同事務所の調査によると、2023年上半期のサステナビリティボンド発行数は1785件で5,680億ドル(約79兆円)を調達しました。その中でもグリーンボンドが市場を席巻し、発行数935件、調達額3,510億ドル(約49兆円)です。これは上半期の調達額として最高規模で、2023年はグリーンボンドの発行額で記録的な年になるであろうとリンクレーターズは発表しています。

グリーンボンド単体で見ると、発行者別では銀行が最大規模にあたる1,230億ドル(約17兆円)を調達し前年を大幅に上回りました。地域別ではアジア太平洋地域が大幅な伸びを示した一方で、欧州は引き続き最大の市場でありこれまでに448件のグリーンボンドが発行され、総額1900億ドルを調達しています。欧州におけるグリーンボンドの普及は、今秋に採択見込みのグリーンボンド基準の影響が少なからずあるとリンクレーターズは推測しています。

世界のグリーンボンド市場規模は急激に拡大しており、Climate Initiativeのデータによると2022年こそロシアによるウクライナ侵攻の影響により大幅に減少しているものの2014年はおよそ360億ドル程度だったものが2021年には約5,800億ドルでした。

現在欧州で進んでいるグリーンボンド基準は、「欧州グリーンボンド(EUGB)」として認定を受けるために必要な基準を設定するものです。2023年3月に暫定合意したと発表されています。これにより。グリーンボンド発行拡大を進めながら、グリーンウォッシングを防ぐ目的があります。

グリーンボンドの実行力は議論の対象となっており、1,000本近くのグリーンボンドを分析した法学者が「投資家がグリーンボンド発行企業に約束の履行を求めるのに必要な条件が、契約書に明記されていないケースがよくある」「環境に絡む説明責任の履行という観点でグリーンボンド市場に改善は見られず、少なくとも法的な文書から判断すると、そうした説明責任を回避するのがより巧妙になっている現状が浮かび上がってきた。」と批判しているとブルルームバーグが報じています。

《ニシダ》