大企業、ベンチャーキャピタルともに9割が気候変動領域に関心

デロイト トーマツは、「気候変動(脱炭素)領域におけるイノベーション活動」の実態調査の結果を発表しました。調査対象は、国内大企業およびベンチャーキャピタル (Morning Pitch会員)290名/235社です。

データ・リサーチ リサーチ
大企業、ベンチャーキャピタルともに9割が気候変動領域に関心

デロイト トーマツは、「気候変動(脱炭素)領域におけるイノベーション活動」の実態調査の結果を発表しました。調査対象は、国内大企業およびベンチャーキャピタル (Morning Pitch会員)290名/235社です。

調査背景

2015年の「パリ協定」では目標(1.5℃努力目標)が設定され、2018年のIPCCの「1.5 ℃特別報告書」では、20兆ドルに及ぶ経済損の試算が発表されました。また、世界銀行が2021年9月に公表した報告書では、気候変動対策を早急に講じない場合、2050年までに2億1600万人が自国内での移住を余儀なくされる可能性があると指摘しています。

日本では2020年10月より開かれた第203回臨時国会にて、菅政権が「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言しました。今回の実態調査はこのような状況のもと、日系大企業、ベンチャーキャピタルを対象に実施したものです。

調査結果

事業会社

事業会社の現状を見ると、気候変動は「社会」と「自社」双方共が取組むべき課題だと、247名の回答中、9割以上が回答。事業として取組むことに関心を持っていると、9割が答えました。

気候変動(脱炭素)事業は、6割程度の企業が実際に行動を起こしていることがわかりました。一方、成果(一定の売上)を出している企業は1割に留まっています。事業としての取組みが進まない主な背景/課題を見ると、社内の方針や体制がないことや、手法が分からないという回答が多くありました。

取組みが行われている気候変動(脱炭素)に関する事業は、既存事業の延長または派生が7割弱、新規領域に取組んでいるのは3割でした。事業への取組み手法は、自社単独検討に比べ、戦略的提携/協業が多くなっています。

事業領域で関心が高く、取組みが進んでいるのは、「省エネ」「再生可能/クリーンエネルギー」「電化」など、日系企業が従来から手掛ける事業領域でした。

比較的新しい事業領域となる「サーキュラーエコノミー」「DXによる温室効果ガス排出量最適化」などは、関心が高い反面、取組みの比率が相対的に低くなっています。新しい事業領域の中で、関心に対し、取組みが進んでいる事業領域は、「CCS/CCUS」が挙げられます。

気候変動(脱炭素)におけるファンド設立を検討/既に設立しているという回答は、16%ありました。

ベンチャーキャピタル

ベンチャーキャピタルの現状を見ると、気候変動は「社会」と「自社」双方共が取組むべき課題だと43名中、9割以上が回答。投資領域として関心を持っているという回答も、9割を占めています。一方、実際に投資を実践しているのは4割で、投資リターンを得ているのは1社のみでした。

投資に係る関心領域については、日系企業の従来領域である「再生可能/クリーンエネルギー」「電化」「省エネ」などに加え、「サーキュラーエコノミー」にも高い関心があることがわかりました。しかし、実際の投資数は未だ少ないことが明らかになっています。

今後の方向性として、気候変動(脱炭素)におけるファンド組成や投資ポートフォリオに気候変動を加える事を実践または具体的に検討しているのは約7割。ファンド組成時の資金調達にて環境への対応方針が影響を与えると9割が考えています。

一言コメント

「気候変動(脱炭素)領域におけるイノベーション活動」の実態調査について、紹介しました。国内大企業およびベンチャーキャピタルともに、自社のアクションも必要だと認識している回答が9割以上となっています。

一方で、気候変動(脱炭素)に関する事業や投資を実践できているのは半数前後であり、そのうち利益を得られているのはわずかというのが現状です。成果やリターンに結びつけるためには、積極的に手法を共有し、検討していく必要があるのではないでしょうか。

《s.m》