メガバンクらの森林リスク産品に対する資金提供は3070億ドル…米環境NGOが金融業と環境破壊について報告

米環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)など8団体で構成する「森林と金融」連合は、「第28回国連気候変動会議(COP28)」で「金融」がテーマとなっていた2023年12月4日に合わせて「生物多様性崩壊をもたらす金融業務:熱帯林破壊を助長する銀行と投資家の追跡」と題した報告書を発表しました。

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メガバンクらの森林リスク産品に対する資金提供は3070億ドル…米環境NGOが金融業と環境破壊について報告
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米環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)など8団体で構成する「森林と金融」連合は、「第28回国連気候変動会議(COP28)」で「金融」がテーマとなっていた2023年12月4日に合わせて「生物多様性崩壊をもたらす金融業務:熱帯林破壊を助長する銀行と投資家の追跡」と題した報告書を発表しました。

本報告書では、大手金融機関が熱帯林地域における森林破壊、生物多様性の損失、気候変動、人権侵害を助長していることを包括的に考察しています。分析の結果、パリ協定締結以降の2016年から2023年9月にかけて、メガバンクら銀行が森林リスク産品に3070億ドルの資金を提供していることが明らかになりました。この結果は、世界の大手銀行と投資家の掲げる森林関連ESG方針が、森林と生物多様性の広範かつ継続的な損失を防止できていないことを示しています。

報告書では、森林リスク産品セクターの6品目(牛肉、パーム油、紙パルプ、ゴム、大豆、木材)に関わっている約300社について森林部門事業に対する商業資金の流れを分析。森林リスク産品セクターへの融資・引受と債券・株式保有において、どの銀行と投資家が最も大きな役割を果たしているかも明らかにしています。

また、銀行や投資家のESG関連基準の評価も実施しました。平均評価はわずか17点で、100を超える銀行と投資家のうち、30点以上の評価を受けたのは20社にとどまり、50点を超えた銀行は2行しかありませんでした。森林リスク産品セクターに提供される資金の量と、森林破壊と権利侵害の防止措置である投融資方針との間に大きな隔たりがあることが明らかになりました。

森林リスク産品への資金提供者のトップはブラジル銀行とブラデスコ銀行です。2行は主にブラジルの牛肉セクターと大豆セクターに融資しており、森林伐採と権利侵害を防止するための方針が不十分です。また、米ウォール街の巨大金融機関であるJPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ、シティグループも紙パルプやパーム油セクターに多額の資金を提供していますが、森林や生物多様性、人権を保護するためのESG方針が弱く、低評価となっています。

日本の金融機関も、紙パルプとパーム油に多くの資金を提供しています。メガバンクではみずほフィナンシャルグループが最も多くの資金を提供しており、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)とSMBCグループもトップ20銀行に入りました。また、日本の金融機関の方針評価は低く、環境・社会面よりもガバナンスに関する方針が重視されていることが明らかになりました。

報告書では、金融規制当局と金融機関が社会と人類が依存している生態系を守るために必要な公正な移行を促進するよう、国際的な公共政策の目標に沿って、資金の流れを調整する緊急措置を講じる必要があるという結論が出されました。そのために「森林と金融」連合は、金融セクターに対して5つの基本原則の採用を求めています。要求している内容は、「生物多様性の損失の停止と回復」、「先住民族と地域コミュニティの権利尊重と優先」、「公正な移行の促進」、「生態系の完全性確保」、「セクターや課題、金融サービス全般にわたって、気候変動・生物多様性・権利尊重の様々な機関目標と整合させること」です。

《編集部》