気候変動が紛争と飢餓を起こす 6割が争いの悪化を実感…NGOワールド・ビジョンが報告

世界の子どもを支援する国際NGOワールド・ビジョン(WV)は、11月30日から開催される「国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)」を前に、報告書『Rising Storms –Climate Impacts on Conflict, Community Tensions and Hunger (勢いを増す嵐:紛争、コミュニティの緊張、飢餓への気候の影響)』を発表しました。

データ・リサーチ データ
気候変動が紛争と飢餓を起こす 6割が争いの悪化を実感…NGOワールド・ビジョンが報告
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世界の子どもを支援する国際NGOワールド・ビジョン(WV)は、11月30日から開催される「国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)」を前に、報告書『Rising Storms –Climate Impacts on Conflict, Community Tensions and Hunger (勢いを増す嵐:紛争、コミュニティの緊張、飢餓への気候の影響)』を発表しました。報告書では、気候変動が紛争や飢餓、移住にもたらす影響について、実際に影響を受けている地域に住む人々の声を明らかにしています。

■調査対象
調査対象は、WVが活動する低中所得国9カ国で暮らす2,716人です。地域を管轄する各WV事務所のキャパシティ、気候や紛争、飢餓に関連する活動実績、地理的な広がりを考慮して選ばれました。特定地域に関する記述であり、国全体に関する記述ではありません。データ収集が実施されたのは、2023年8月から9月の間です。

■調査地域
ブルキナファソの中東部地方、コンゴ民主共和国の上カタンガ州とルアラバ州、イラクのアンバール県、パプアニューギニアのブーゲンビル島、スリランカのプッタラム県。エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグアの都市、農村、先住民コミュニティから得られたデータは、乾燥回廊としてグループ化

主な統計

報告書によれば、回答者の86%が「気候変動は自分たちのコミュニティにとって深刻な課題」だと答え、83%が「気候変動は自分自身と家族に深刻なリスクをもたらす」と感じています。懸念として挙げられた気候変動は、干ばつ、降雨パターンの変化、熱波の順でした。

さらに、水不足、汚職、移動・移住などが争いをもたらし、6割にのぼる人が「気候変動がコミュニティ内の争いを悪化させている」と感じています。過去12カ月の間に何らかの争いを経験した人は全体の35%で、その原因は土地や水であることが多く、民族・宗教をめぐる争いを上回っていました。

99%の回答者が「気候変動が自分たちのコミュニティから、あるいは自分たちのコミュニティへの移住の要因になっている」と答え、82%が「気候変動により自身の経済状況が悪化した」と感じていました。気候変動による悪影響を尋ねると、「生計手段の喪失」や「牧草地の減少」、「作物の不作」、「水や食料の入手困難」など、生計に関連する項目を挙げた回答者が72%に達しました。「気候変動は飢餓や食料不安のリスクを増大させた」という問いに対し、57%が「とてもそう思う」を選んでいます。

ワールド・ビジョンのグローバル飢餓対応ディレクターで「COP28」に参加するメリー・ンジェリは、「子どもたちの未来のために地球を守らなければ、世界は温暖化するだけでなく、より血にまみれ、より飢餓に苦しむことになる」と、「COP28」での指導者の具体的な行動を求めています。本報告書は、気候変動が紛争や飢餓、移住などにもたらす影響の広範さを明らかにしたものであり、「COP28」で国際社会が深刻な現実に対して具体的な対策を打ち出せるのか注目されます。

《編集部》