米環境NGO レインフォレスト・アクション・ネットワーク（RAN）をはじめとするNGOは、新報告書「化石燃料ファイナンス報告書2023～気候カオスをもたらす銀行業務～」（第14版）を発表しました。
「化石燃料ファイナンス報告書2023」は、化石燃料業界への資金提供状況を吟味し、銀行による気候に関する公約の実態を明らかにしています。
報告書の概要
化石燃料への年間での資金提供者を見ると、カナダロイヤル銀行（RBC）が米国の銀行 JPモルガンチェースを抜き、2022年の第1位となりました。同年、RBCはタールサンド部門に48億ドル、シェールガス部門に74億ドルなどを含めて、合計421億ドルを化石燃料プロジェクトに投資しています。
カナダの銀行はパリ協定発効以降、8,620億ドルを化石燃料企業に提供。RBCは、コースタル・ガスリンクのシェールガス向けパイプラインのような拡張事業に対し、資金提供を続けています。
化石燃料への資金提供では、全体的に米国の銀行が目立ち、2022年に行われた融資の約28％を占めていました。同年の化石燃料企業全般への資金提供額に注目すると、ワースト10位に、日本のメガバンクである三菱UFJフィナンシャル・グループ（MUFG）、みずほフィナンシャルグループ（みずほFG）、三井住友フィナンシャルグループ（SMBCグループ）の3行が入っています。
液化天然ガス（LNG）を拡大している上位30社は、ロシアに関連する危機を利用し、2021年に比べ2022年に、銀行から50％近く多くの資金を確保しました。
しかし、エネルギー専門家の多くはヨーロッパでのLNG拡大計画は不要とみなし、新プロジェクトは供給過剰と長期的な依存に結び付くという見方に合意しています。
報告書によると、これまでのところ、世界の銀行によるネットゼロの約束は何のメリットもありません。主要な60の銀行のうち49行はネットゼロのコミットメントを行ったものの、ほとんどが化石燃料拡大のための融資を除外する方針を伴っていません。
取り上げた60行は、化石燃料を拡大する上位100社に対し、2022年の1年間で合計1500億ドルを投入しました。
化石燃料部門別の報告（一部）
2022年に液化天然ガス（LNG）への資金提供額が上位の銀行は、みずほFG、モルガンスタンレー、JPモルガンチェース、ING、シティ、SMBCグループです。LNGに対する全体的な資金提供は、2021年に152億ドルでしたが、2022年に227億ドルへと1年で50％近く増加しています。
2022年の海洋の石油ガスのワースト資金提供リストでは、欧州の銀行のBNPパリバ、クレディ・アグリコル、日本の銀行のSMBCグループが上位に入っています。同年の資金調達額は合計340億ドルでした。
■3メガバンクの動向
2022年の日本の3メガバンクの動向を分野別に見ると、LNGと北極圏石油ガス分野、化石燃料事業拡大企業への資金提供額でも、ワースト10位にMUFG、みずほFG、SMBCグループの全3行が入っています。特に、みずほFGがLNG上位30社への資金提供で、初めて1位になっています。
2016年から2022年の資金提供累計総額でも、LNG分野で3メガバンクがワースト10位入り。化石燃料企業全体への資金提供では、MUFGが6位、みずほFGが8位、SMBCグループは16位となっています。
賛同団体は、主要な銀行の多くがネットゼロ目標を宣言する一方で、化石燃料事業への資金提供を行うという矛盾を指摘。各銀行に対して、方針の見直しを促すコメントを出しています。
