進展はあるが「まだ不十分」」企業のSDGs実態調査

GCNJ会員企業・団体の進捗度に関する最新の調査結果をとりまとめた「SDGs進捗レポート2023」を2023年3月6日(月)に公開しました。

データ・リサーチ リサーチ
進展はあるが「まだ不十分」」企業のSDGs実態調査

一般社団法人グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)および公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES=アイジェス)および一般社団法人グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」について、GCNJ会員企業・団体の進捗度に関する最新の調査結果をとりまとめた「SDGs進捗レポート2023」を2023年3月6日(月)に公開しました。

ハイライト

【SDGsの認知・浸透度】

経営への組み込みに関する課題が残っていることが調査で判明しました。従業員数が10~249人の企業は、方針・表明はあるものの、具体的な行動に結びついておらず、250~4,999人の企業は、KPI(重要業績評価指数)の設定や定量目標・実績の開示、役員報酬との結び付けが課題に。また5,000人以上の企業でも、役員報酬との結び付けが課題となっています。

【ジェンダー平等】

役員における女性比率の目標値設定、男性の育児休業取得に向けた取り組みなどで進捗が見られた一方、サプライチェーン・マネジメントにおけるジェンダー平等を考慮した取り組み、自社を超えた地域・社会のジェンダー平等推進への貢献は、ともに約半数が未実施という結果になりました。

これらの項目において、日本企業は「女性活躍」という視点から「ジェンダー平等」に切り替えることが重要であるとレポートでは指摘されています。

【はたらきがい・人権】

「国連ビジネスと人権に関する指導原則」が具体的に示す項目を「尊重(原則)」として設定。「尊重(原則)」全項目の平均回答率は42.1%→44.3%と微増したものの、依然として半数以下にとどまっています。消費者の人権を人権課題として十分に認識していない企業、地域住民の人権に取り組んでいない企業がともに3割を超えており、消費者や地域住民の人権尊重への意識が十分ではないことも課題です。

【持続可能な消費と生産(SCP)】

この分野に関する社内方針を明確化している企業は昨年比24.8%増の78.9%でした。

具体的な取り組みとしては、持続可能な原材料調達(59.9%→71.1%)、前年は限定的であったシェアリングサービスの展開(14.0%→26.3%)が増加。一方で、生物多様性や汚染問題など他の環境問題にも同時に貢献できるような事業展開、消費者やサプライヤーに向けた循環性・物質効率性などの環境情報およびトレーサビリティ情報管理の検討が今後期待されます。

【気候変動】

気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)やスコープ3排出量の情報開示への対応が必要なことから、サプライチェーンを巻き込んだ働きかけが26.0%→41.7%と進展。ネット・ゼロ達成に向けた活動を後押しする制度として、GCNJ会員の約90%が再生可能エネルギーの比率拡大を重視。削減インセンティブを与えるカーボンプライシングの導入への期待も36.5%→47.1%と大きく増加しています。

【総括】

前回の2021年調査から様々な面での進展が確認されたものの、5つのゴールの専門家の評価としては、「SDGs達成に求められる水準の企業行動としてはまだ不十分」で一致しているとのこと。

さらに取り組みを加速させるためには、国内外のイニシアチブへの参加が効果的です。たとえばジェンダー平等とネット・ゼロについては、女性のエンパワーメント原則(WEPs)およびScience Based Targetsイニシアチブ(SBTi)への署名の有無により一部取り組みに顕著な差が見られました。

調査について

本レポートは、2022年9月~11月に行った調査結果に基づき、SDGsに関する認知度のほか、国連グローバル・コンパクト(国連GC)が重視するSDGsのゴール5、8、13、16と、日本企業で取り組みの加速が期待されるゴール12の計5つのゴールの取り組みの進捗について、各分野の専門家による分析・考察をまとめています。5つのゴールの分析・考察にあたり主題にしたテーマは、企業・団体の活動にとって重要な「ジェンダー平等」、「はたらきがい・人権」、「持続可能な消費と生産」、「気候変動」、「腐敗防止」になります。前回の調査でSDGs認知度と取り組み進捗度の十分な高まりが明らかになったことを踏まえ、今回は、SDGsの経営への組み込みや取り組む際の課題など、実践段階における取り組みの「質」について深堀りした内容となっています。

■調査目的
・GCNJ会員企業・団体が、調査結果により自らのSDGs進捗度を測り、活動を推進させることに役立てる。
・会員企業・団体の現状のSDGs取り組み・浸透の進捗と課題を分析し、SDGs達成に貢献する。
■調査スケジュール:<実査>2022月9月26日~11月14日 オンラインで実施
■調査対象:513企業・団体(2022年9月1日現在のGCNJ会員すべて)
■調査回答:279企業・団体(54%) その内、企業が259、ノン・ビジネスが20
※本レポートでは企業の回答結果の分析・考察を掲載。ノン・ビジネス会員による連携・協働の取り組みは別冊で紹介
■設問数および内容:
「SDGs認知・浸透度の進捗」に加えて、SDGsの5つのゴールの進捗度等、計約50問。
対象とした5つのゴールは、国連GCが重視するSDGsのゴール5、8、13、16と、日本に特に進捗が期待されているゴール12。それぞれ企業・団体の活動にとって重要な「ジェンダー平等」、「はたらきがい・人権」、「持続可能な消費と生産」、「気候変動」、「腐敗防止」を分析・考察の主題とした。
GCNJ会員に毎年回答いただくことで、企業のSDGs目標達成に向けた進捗度を測るガイドラインあるいはチェックリストとして活用いただくことを期待している。

《The Green Economy編集部》